25名のフィールズ賞受賞者からなる数学者たちが、AI企業が数学的問題解決をベンチマーク(性能指標)として推進する動きに対し、数学という学問やコミュニティにとって有害であるとする公開書簡を発表しました。
この動きの背景には、2026年9月8日にOpenAIが、数学の未解決問題の一つであるナビエ・ストークス問題を未公開モデルで解決したと発表したことがあります。数学者たちは、OpenAIが発表した166ページの論文において、数学者が新しい発見を共有する際に用いるような詳細な説明がほとんど含まれていない点を問題視しています。
公開書簡の中で数学者たちは、AI企業と数学コミュニティの目標には「深刻な不一致」があると指摘しました。AI側が問題解決のみを重視し、大量の真偽判定を高速に行うことは、数学の核心である「概念的な理解や洞察」を軽視させ、新たなアイデアを生み出す土壌を破壊しかねないと警鐘を鳴らしています。
また、AIによる成果の性急な発表は、先行研究への引用や論文執筆といったプロセスを困難にし、知的帰属や盗用に関する問題を引き起こす懸念も示されています。数学界はAIの進化への適応が必要であるとしつつも、その展開が利益をもたらすか破壊的影響を与えるかは、人間の意思決定に大きく左右されるとして、社会全体での対処を求めています。
この懸念を受け、OpenAIがCaltech Mathathonへのスポンサーシップを撤回することを決定したと報じられています。また、Mathathon側も懸念を認め、第2ラウンドの応募要件にarXivへの論文掲載を必須とするなどの公式説明の更新を行いました。
出典
- AIベンチマークに数学を使うのは有害だとして数学者たちが反発 (GIGAZINE、2026-09-15)
- Declaration — Math and AI